SD Expressカードとは

SD Expressカードとは

SD Express について

前回の技術コラムでは、SDカード規格でのUHSについて、掘り下げた説明をいたしました。

SDカードのUHSとは…

上記記事では混乱を避けるため、あえてSD Expressを省いた説明をさせてもらっています。
今回はこの流れを受ける形で、SD Expressについて“簡単に”触れてみたいと思います。
なお、現在(2025年12月時点)、弊社のSDカードラインアップにはSD Expressカードはございませんので、その点はご了承ください。

SD Express 規格とは

規格書のRevision Historyを見てみますと、SD Expressは2018年発行の規格書ver.7.00 において、まずFullSD形状のものが規格化されています。
SDカードにPCIe(PCI Express)とNVMe技術を導入して、それまでのUHS-I/II/IIIに続く高速規格として準備されたものになります。

UHS-IIバスインターフェースの2列の端子配列である17ピンに2ピンを追加して19ピンとし、PCIe Gen3 1-Laneとして最大転送速度:985 MB/sを実現しています。
そして、2019年発行の規格書ver.7.10でmicroSD形状のmicroSD Expressが追加されています。

2020年発行の規格書ver.8.00でPCIe Gen3 2-Lane、PCIe Gen4 1-Lane、PCIe Gen4 2-Laneが規格化されました。2-Laneに対応するため、端子が3列(27ピン)の形状が規格追加されています。

ただし、microSDはサイズ的な制限で端子を3列化できないため、2-Laneには対応していません。私も欲しい「Nintendo Switch 2」に採用されているmicroSD ExpressはmicroSD形状なので、Lane数は1ということになります。

図1:SD Expressカード ピン配置

表1で、SD Expressカードの規格を一覧にしてみました。
せっかくですので、前回の資料を流用してSD I/Fと並べてみます。
いかに高速化されているか、わかるかと思います。

表1:SDカード バススピードモード一覧

*1)このバススピードモード(FD624)がUHS-IIIと呼ばれています

SD Express のスピードクラス

SD Expressにも通信速度を保証するスピードクラスがあり、表2のように2023年発行の規格書ver.9.10でSD Express Speed Classが規定されています。

表2:SD Expressスピードクラス一覧

下位互換性

SD Expressカードは、当然ながらホスト機器側がSD Expressの規格に対応していないと正しく動作しません。もしSD Express非対応の機器に挿入すると、UHS-Iでしか動作しませんので注意が必要です。

SD Expressカードの市場要求について

例えば以下のような理由が考えられます。

1.高解像度、高フレームレート映像の普及
4K/8K 映像や120fps を超える高フレームレート撮影、RAW動画記録など、カメラ・映像分野では、
記録メディアへの要求帯域が急速に上がっています。
従来のUHS-Iカードでは、一定以上のビットレートを支えることが難しくなり、SD Expressは
「SDカードの形のまま」より高速なメディアへの移行を可能にする規格だと言えます。

2. エッジ機器、産業機器の小型化、ローカルストレージの高速化
SDカードのメリットは、ホットスワップ(活線挿抜)のしやすさと物理的に小型なことです。
SDカードの大容量化とともに、SD Expressで高速通信が可能になったことで、従来の2.5inchやM.2など、いわゆる「組込み型」と呼ばれるSSDで対応されてきた市場に対して新たに「取り外しができる」という要望に応えられるようになります。
SDカードに置き換えることにより「機器の小型化」も期待できます。
また、ネットワーク接続が整備されていないされていないような環境では、「カードを抜き差ししてデータを機器に移行する」という、より扱いやすい使い方ができるのも魅力の一つと言えます。

産業用途での課題

産業用フラッシュストレージには、長期供給に加え、動作温度範囲、電源断耐性、書き換え寿命など信頼性にかかわる多くの性能が求められます。
現在、PCIeおよびNVMeを採用した高速ストレージには「発熱」が一つの課題として挙げられることが多く、SD Expressでも同様の課題があります。
「SDカード」と「NVMe」2つの特性を考慮し、SD Expressを評価・設計することが重要なポイントとなります。

まとめ

今回は、SD Expressについてお話ししました。
規格上の概要についてのさらっとした内容になりましたが、いかがでしたでしょうか?
「Nintendo Switch 2」が採用したことで、一気に注目を浴びたSD Expressですが、SD Expressカードに対応する機器がまだ少ないこともあり、今のところ弊社でラインアップするには至っておりません。
準備は進めておりますので、今後の普及状況しだいではラインアップするかもしれません。

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