Cat5〜Cat8の違いと選定の考え方

なぜ産業機器でもLANケーブル選定が「設計要素」になってきたのか
工場内ネットワークのEthernet化が進み、FAコントローラや産業用PC、産業用カメラ、センサ類まで含めて「IPネットワーク上でつながる」構成が一般的になってきました。
その一方で、新規装置の立ち上げ時には高速な産業用スイッチ・産業用PCを採用したのに、既存在庫のLANケーブル(Cat5eや不明品)を流用した結果
- 思ったほどスループットが出ない
- 通信が不安定になる
といった相談も増えています。
LANケーブルは単価が比較的安く「部材」として軽く見られがちです。しかし、
- 画像検査装置やデータ収集システムでは、ケーブルがボトルネックとなり性能を出し切れない
- ノイズ源の多い工場では、シールドの有無やケーブル品質が通信安定性に直結する
- 設備のライフサイクルが長い分、将来の増速余地を見込んだ規格選定がトータルコストに影響する
といった理由から、LANケーブルは「設計要素のひとつ」として扱う価値がある部品になっています。
本稿では、グループ会社であるエレコムのLANケーブル(Cat5e〜Cat8)を前提にしながら、産業機器・組込み機器での現実的な選び方を整理します。
Cat5〜Cat8の違い:速度・距離・ノイズ耐性の観点から
まず、カテゴリーごとの代表的なスペックイメージを整理します(いずれも一般的な仕様の目安)。

- Cat5
- 対応速度:100Mbpsまで(100BASE‑TX)
- 対応距離:〜100m(100Mbps)
- 特徴 :旧来のFA機器や10/100Mbps対応スイッチで使われてきた世代。
1Gbpsが前提となる現在の新規設備では、原則として新規採用は推奨されない。
- Cat5e
- 対応速度:1Gbpsまで
- 対応距離:〜100m(1Gbps)
- 特徴 :既存設備で最も広く使われているが、新規採用としてはやや古い世代。
- Cat6
- 対応速度:1Gbps(〜100m)、10Gbps(〜約55m)
- 特徴 :1Gbps装置が主流の現場で、コストと性能のバランスが良い“現行標準”。
- Cat6A
- 対応速度:10Gbps(〜100m)
- 特徴 :10Gbpsスイッチや産業用PC、画像系システムのバックボーンに適した本命規格。
- Cat7/Cat7A
- 対応速度:10Gbpsクラス(〜100m)
- 特徴 :シールド構造が強化され、ノイズの厳しい環境でのマージン確保に有利。 ※1
- Cat8
- 対応速度:25〜40Gbps(〜30m程度)
- 特徴 :本来はデータセンターなど短距離・超高速用途向け。産業用途では「装置間の極短 距離で高いノイズマージンを取りたい」といった特殊なケースで検討対象。
※1 Cat7/Cat7A はISO/IEC規格であり、本来は専用コネクタ(GG45など)を前提としますが、市場にはRJ45プラグを採用したCat7相当ケーブルも多く流通しています。
この中で、産業機器・組込み機器の現場で“主役”になりやすいのはCat6〜Cat6Aです。
Cat8は現状の規格上は最速ですが、対応する産業用スイッチや機器が限られるため「入れておけば速くなる万能ケーブル」ではない点に注意が必要です。
産業機器ならではの検討ポイント
1.機器インターフェースと配線距離
産業用PCやFAコントローラのEthernetポート仕様は
- 1000BASE‑T(1Gbps)
- 2.5GBASE‑T/5GBASE‑T
- 10GBASE‑T(10Gbps)
など機種によりまちまちです。
どの速度まで実際に使う可能性があるかを把握することが第一歩になります。
- 装置内の短距離配線(〜3m程度)
- 制御盤間やフロア内の装置間配線(〜30m程度)
- 工場内フロアを跨ぐような幹線配線(〜100m)
上記のように用途ごとの距離レンジもあわせて確認しておくと、カテゴリー選定がしやすくなります。
2.ノイズ環境(インバータ・モータ・溶接機など)
工場内には
- インバータ、サーボモータ
- 溶接機、ヒータ制御
- 大電流を扱う電源ライン
など、強い電磁ノイズ源が多数存在します。これらとLANケーブルが長距離にわたって並走すると、ノイズによる誤り率増加・リンクダウンにつながるリスクがあります。
このため産業用途では
- できる限り電源ラインやインバータケーブルから距離を取る配線設計
- やむを得ず近接、並走せざるを得ない場合には、シールド付きケーブル(Cat6AのSTP品、Cat7/Cat8相当)の採用
STP(Shielded Twisted Pair) 金属シールドを追加したケーブル ※2
UTP(Unshielded Twisted Pair) 金属シールドがないケーブル
※2 STPケーブルは、適切な接地(アース)設計と組み合わせることで本来のノイズ対策効果を発揮します。
アースが取れない環境では、かえってノイズを拾いやすくなる場合もあります。
といった対策が検討対象になります。

3.装置内配線と装置間配線の違い
- 装置内配線(数十cm〜数m)
- 機器どうしが近く、ケーブル交換もしやすい
- コスト優先で「Cat6 UTP」を標準にするケースが多い
- 装置間配線・ライン配線(〜数十m)
- 敷設後の交換が難しく、ダウンタイムも大きい
- 将来の速度アップやノイズマージンも含めて、Cat6A以上の採用がコスト的にも合理的
このように「どこに敷くケーブルか」によって、求める性能・寿命・入れ替えコストが変わる点が、コンシューマ向けと異なるポイントです。
カテゴリー別の「現実的な使いどころ」
Cat5e/Cat6:既存設備・1Gbps中心の装置
- 既存工場で1Gbpsスイッチ、産業用PCを中心に構成されており、今後も10Gbps化までは想定しないライン
- 画像系ではなく、制御信号やデータロギングがメイン
上記のような環境では、Cat6(UTP)がもっともコストメリットの高い選択になります。
Cat5eは既存設備の保守用途としては有効ですが、新規標準としてはCat6への置き換えを検討するフェーズに来ています。
Cat6A:10Gbpsバックボーン・画像系システム
- 10Gbps対応の産業用スイッチや産業用PCを採用する新ライン
- 産業用カメラから画像検査PCへの大容量データ転送
- データ収集サーバーやNASと多数の装置を高速接続したい場合
このようなケースでは、Cat6Aを標準ケーブルとして採用することで
- 100mまで10Gbpsを狙える
- 2.5Gbps/5Gbpsへの段階的な回線増速にも対応しやすい
といったメリットがあります。
価格はCat6より上がりますが、設備ライフと将来の増速ニーズを考慮すると、トータルコストで優位になることが多いカテゴリーです。
Cat7/Cat8:ノイズが厳しい環境や短距離の高速リンク
Cat7/Cat8は、シールド構造が強化されたハイエンドケーブルとして
- インバータや溶接機の近傍をどうしても配線せざるを得ない区間
- ラック内や装置間のごく短距離で、ノイズマージンを最大限取りたい区間
などで検討対象となります。
Cat8は規格上「25〜40Gbps/〜30m」と非常に高速ですが
- 多くの産業用スイッチ、産業用PCは10Gbpsまでの対応が中心
- 区間全体が40Gbps対応機器で揃っていなければ速度は上がらない
上記のような環境が多い現状では「将来を見据えた標準ケーブル」というより、特定区間のノイズマージンを稼ぐための選択肢と捉えるのが現実的です。
エレコム製LANケーブルから見た、産業機器向けの選び方
エレコムのLANケーブルラインアップには、同じカテゴリーの中でも
- ツメ折れ防止タイプ/標準タイプ
- スタンダード径/スリム/フラット
- UTP(非シールド)/STP(シールド)
- メッシュ外被など高耐久タイプ
数多くのバリエーションがあります。産業用途では、次のような切り口で選ぶと整理しやすくなります。

1. 標準カテゴリーを決める
- 1Gbps中心、10Gbpsは想定しない:Cat6 UTPを標準に
- 新規ラインや画像系で10Gbpsを見据える:Cat6A(UTP+必要に応じてシールドタイプ)を標準に
2. 装置内/装置間でケーブルタイプを分ける
- 装置内、短距離:取り回しのしやすいスリムタイプややわらかタイプ
- 装置間、盤間:機械的ストレスが少ないルートでスタンダード径タイプを採用し、必要に応じてシールド付きを選択
3. ノイズ環境に応じてシールド有無を決める
- 電源ケーブルやモータケーブルと十分距離が取れる:UTPでコストメリットを優先
- インバータや溶接機に近接する:Cat6A STPやCat7/Cat8相当のシールドタイプを重点的に採用
このように「カテゴリー」「シールド」「形状」の3軸で標準仕様を決めておくことで、装置ごと・プロジェクトごとの都度検討を減らし、調達面・保守面の負荷を大きく下げることができます。
まとめ:標準ケーブルの“格上げ”で、将来の装置更新コストを抑える
- 産業用PCやFAコントローラ、産業用スイッチと組み合わせた工場内ネットワーク構成やLAN配線の標準化については、当社グループまでお気軽にご相談ください。
- ご計画中の装置構成(採用予定のインターフェース速度・配線距離・ノイズ環境)に応じて、エレコム製LANケーブルを前提にしたカテゴリー選定や型番候補のご提案も可能です。
- 実環境に近い条件での評価をご希望の場合は、産業用PCやストレージ製品とあわせた評価機貸出も承っております。
評価機貸し出しサービス/製品に関するお問い合わせ
他社商標について
記事中には登録商標マークを明記しておりませんが、記事に掲載されている会社名および製品名等は一般に各社の商標または登録商標です。
記事内容について
本ページに掲載している画像の一部は、当社グループ会社であるエレコム株式会社の提供です。
この記事の内容は、発表当時の情報です。予告なく変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。