SSDの選びかた(4/5):寿命を縮める使いかた2

SSDの選びかた(4/5):寿命を縮める使いかた2
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おことわり

 この記事は、2019年11月にQiitaに投稿した記事を加筆修正したものです。

はじめに

 SSDの寿命の有効利用には「TBW以外にSSDが搭載するNANDフラッシュメモリの寿命を消費する要素」を小さくする必要があります。しかし、この要素の大小は製品の特性に大きく依存するため一概に「大きい=悪い」とは言えません。ただし、使いかたを工夫することでこの要素による寿命消費の肥大化を防ぐことはできます。

 そこで今回の記事も、前回の記事から引き続き「SSDの寿命を縮める(=TBWが目減りする)使いかた」を説明します。

 この記事に記載した使いかたを避けることで、TBWを最大化し、SSDの寿命を最大限活用できることが期待できます。

まとめ

  • 温度や振動などの動作環境にも注意
  • 電源ブチ切りは×
  • 不安定な電源は×

温度や振動などの動作環境にも注意!

<ポイント:温度以外の動作環境にも注意>

 SSDの運用においては、SSD自身の発熱による温度上昇だけでなく、SSDの動作環境温度も重要です。

 SSDコントローラは一般的な半導体チップと同様に、過剰な高温には弱い特性を持ちます。またNANDフラッシュメモリは高温になるとデータ保持特性が落ちますので、高温での動作は避ける必要があります。

 さらに「温度変化」にも注意が必要です。というのも、NANDフラッシュメモリには、一般的に、データを書き込んだ時の温度とデータを読み出した時の温度の差が大きいとエラー率が上がるという特性があります1。このため、SSDは高温でなくかつなるべく一定の温度で使うことが推奨されます。

 また動作環境という点では振動にも注意が必要です。

 「SSDは可動部品がないから振動に強い!」とよく言われます。確かに、NANDフラッシュメモリをはじめとした半導体部品には可動部はありませんが、SSDがコネクタを介して接続されている場合、このコネクタが厄介です。

 もしコネクタの使用に不安がある場合には、コネクタを使用しない形状の製品、例えばBGA形状の製品が候補になり得ます。BGA形状の製品の場合、振動に対してははんだの耐久性がポイントになります。アンダーフィルを行うなど、必要に応じてはんだ接合部の強度を上げる必要があります。

 オフィスや家庭のようによく管理された環境で使用する機器用のSSDであれば問題にはなりませんが、そのような環境でない場合、上記のような動作環境に注意を払う必要があります。

電源ブチ切りはダメ!

<ポイント:手順を守らない電源断はデータ喪失のおそれあり>

 例えば、SSDの電源をホストPCの電源が繋がるブレーカーを直接落として切断していると、そのツケがTBW短縮に繋がります。

 SSDは、SATAやNVMeで定められた手順に沿う形で電源断を予告されると、電源が切られても良いように内部状態を整えます。逆に、定められた手順以外で電源が切られると、次に電源が投入された時に、SSDの内部状態の整合をとる処理を行います。

 この処理の際に、例えば、電源断直前の処理内容確認目的のNANDフラッシュメモリからのデータ読み出しや、信頼性に悪影響がありそうなデータの移動など、NANDフラッシュメモリに対する読み書きが発生します。このような処理により、寿命が消費されてしまうのです。

 SSDの内部状態の整合をとる処理の内容や処理にかかる時間は、製品により大きく異なります。

 当社製SSDのように不意の電源断による影響を最小限に抑えるために普段からこまめに内部状態の整合を取る製品であれば、上記処理にかかる時間は平均的に短くて済みます。その代わり、「こまめに内部状態の整合性を取る」ための処理で寿命を消費するため、TBWがある程度少なくなります。

 一方、内部状態の整合を取る頻度をできる限り抑えた製品では、前記処理で消費する寿命が少なくTBWの目減りも抑えられますが、その分不意の電源断の影響が大きく、整合を取る処理にかかる時間が長くなるだけでなく、データ喪失の危険性が高くなります。

不安定な電源はダメ!

<ポイント:電源起因の不具合は後々の修正が難しく事前対策必須> 

 電源が不安定ですとNANDフラッシュメモリの操作が不安定になります。

 SSDコントローラとNANDフラッシュメモリのインターフェース電圧(1.2 Vや1.8 Vなど)と比較して、NANDフラッシュメモリのメモリセルの操作には高い電圧を必要とします。このため、NANDフラッシュメモリの操作は電源電圧の揺れに大きく影響を受けます。

 当社製SSDは電源電圧降下を検出してNANDフラッシュメモリの不安定な動作(特にデータ書き込み)をできるだけ防止する機能を備えます。しかし、この機能でも被害の緩和が限界です。

 つまり、安定した電源供給はSSDにとり、なによりやさしい使いかたです。

おわりに

 2回の記事で、SSDの「やさしくない使いかた」つまり「寿命を減らしてしまう使いかた」を説明しました。

 説明したSSDの「寿命を減らしてしまう使いかた」をまとめると以下のようになります。

  • 容量に余裕なく使う
  • 広いLBA空間にランダムライトする
  • 同じデータを読み出し続ける
  • 高温、温度差大、強い振動などの悪動作環境
  • 電源ブチ切り
  • 不安定な電源

 このような使いかたを避けることで、SSDの寿命を最大限有効活用することができます。

 次の記事では、「SSDの選びかた」のまとめとして、具体的にチェック表を示して「SSDの選びかた」を説明します。

Reference

  1. 福田、「福田昭のストレージ通信 Micronが考えるメモリシステムの将来(3):SSDをクルマに載せる(1/2)」、2016年7月6日(2022年6月13日閲覧)

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